企画検証(初回の顧客調査)のコツ

ここでは顧客調査、つまり顧客候補へのアンケートやヒアリングに関して、質の高い調査を行い有益な示唆を得るためのノウハウの一部をお伝えしたいと思います。大きく分けて、目的設定と、有益な示唆を得るための質問です。

まず、当たり前のようで意外にやられていないのが、アンケート/ヒアリング調査の目的の明確化です。なぜこれが必要かというと、質問を作っていると知らず知らずに色々知りたく=聴きたくなってしまい、本来この段階で確認しなくてもいいことを探ってしまったり、その分知るべきことを深ぼることが出来なくなる、というケースが往々にしてあるからです。ヒアリングやアンケートは特に相手の時間という制限があり、特定の相手とは一度しか出来ない可能性もあるので、質問はブラッシュアップしておかないともったいなさが感じられてしまいます。

この話自体は当たり前のように感じられるかもしれませんが、いざ自分でアンケート/ヒアリングしようとなると、目的の明確化がスキップされたり雑になることがあります。アウトプットの獲得に目が向くあまりなのかもしれません。

なお、顧客調査は段階を踏むことが効果的な場合もあります。例えば、顧客のことを知ることに注力する段階と、ソリューションの筋を見る段階です。最初の点はつまり課題仮説を検証することです。この段階では課題を生み出す業務フローなどを知ることも含まれますので、最初はソリューションの話はせずに課題感の深堀りのみに集中した方が良いこともあります。

課題仮説の検証段階で設定すべき目的には、例えばこんな形があり得ます。「◯◯(顧客候補)は◯◯(課題)を◯◯円程度を払ってでも解決したいと考えている、という仮説の妥当性を確かめる」

顧客候補に関しては、業界/業種、企業規模、ユーザーの職種、くらいは仮説でもイメージできていると、調査の精度が上がります。余裕があれば、少しずれた属性の人たち/企業にもヒアリングしてみると、顧客属性の仮説検証にもなります。

いずれにせよ、目的を明確に定義することで、質問はその目的達成に資する答えを得るためのものに絞りやすくなります。逆にそれ以外の質問を思いついても、目的に照らして除外しやすくなります。

次に、新規事業の検証ならではの質問に関して、一つ例を取り上げます。よくあるのが、「◯◯という課題は感じていますか?」「これを解決できるサービスがあったら使いたいですか?」といった質問です。

しかしアンケートでもヒアリングでも、回答者は質問者を喜ばせたいといったバイアスが働きがちで、ポジティブな答えをする傾向があります。また「課題を感じているか」という質問に「ない」と答えると、課題に鈍感な印象を持たれないかと考えてしまう回答者もいて、「はい」という回答へのバイアスが働くこともあります。そして「はい」と答える場合でも、課題の大きさに関わらず少しでもあれば「はい」になります。ここで「課題が大きいか」という質問も見受けますが、「大きい」の基準は人それぞれですので、この回答も心もとないものです。

そして「これを解決できるサービスがあったら使いたいか」も、同様にポジティブな回答をするバイアスが働きがちです。質問者ががんばって考えついたサービス案というのは、言われなくても回答者はそう思っていますので、仮に「どうかなぁ」と思う程度でも、相手を落胆させるのは大方の人は気が引けますので、ポジティブに答える傾向にあります。

こうした事態を避けるには、回答者の主観的な感覚ではなく、「事実」を確認していくアプローチが有効です。

例えばこんな質問の仕方があります。「◯◯という課題に現在どう対応していますか?」です。この答えには例えば、何もしてません、自社内で対応しています、外注しています、ツールを使っています、等々があります。何もしていないのであれば、する必要がない、あるいは優先順が低い課題なのかもしれません。もちろん課題はあっても顕在化していない可能性もありますが。自社内で対応しているのであれば、課題としては解決の必要があり、その程度はかけている時間や人数によります。

外注しているなら、外部にコストを支払っているということなので、それとの比較ではあり得ます。ツールを使っている場合、それが無料ツールだと課題は小さいかサービスの余地が小さいのかもしれませんが、有料であればソリューション次第で乗り換えてもらえるかもしれません。こうした答えがあれば、これを解決するサービスがあったらどの程度使いたいと思ってもらえるかも、自ずと見えてきます。

回答のバイアスを完全に無くすことは無理ですが、極力回避するためには、回答者には正直に回答しやすいように予めこちらの意図を伝えておくのも手です。「筋のない事業に突き進むのが一番怖いので、もし微妙な点があれば是非率直に教えてください。そういったのはもう慣れていますし、その方が有難いです」こういうと、相手も正直に答えやすくなります。それでも表現はやんわりと言ってくれる優しい方々が多いので、どちらかというとネガティブな意見の場合は「つまりダメなんだな」くらいに受け取ってもいいかと思います。

ただ、ネガティブな回答でも、そこで終わってはもったいないこともあります。否定意見でも理由を掘り下げたいところです。もしかしたら理由次第で、違う課題に気づくかもしれませんし、あるいはソリューションにボトルネックがあるのであればそこを変えることで一気に魅力的になるかもしれません。

ソリューションへのニーズに関するヒアリングはまた異なる観点があるのですが、これはまた別の機会にご紹介できればと思います。

この次のフェーズでは、ソリューションの提案に進み、サービス開発に入っていきます。(続きを読む)

 

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